研究概要 |
免疫学的寛容の確立もしくは特異的免疫制法の開発の一助を目的としてドナー感作による移植片生着延長効果の機序解明を試みた。 ドナーとリシピエント間のリンパ球混合培養(mixed lymphocyte culture-MLC)において、stimulation index 10以上の生体腎移植予定患者にcyclosporine投与下にドナー輸血(donor specific transfusion-DST)を100mlづつ1週間隔で3回行った。リシピエントの末梢血のリンパ球表面マーカーCD3,CD4,CD8,CD11,CD19,CD25,HLA-DRをフローサイトメーターで測定し、その変化を輸血前、輸血後第1、3週および移植直前に検討した。 平成7年度では6組の腎移植患者で検討を行った。DSTによりCD8陽性細胞が増加し、CD4/CD8陽性細胞比の減少がみられた。このことと、HLA-DR陽性細胞が増加していたことによりドナー抗原感作がsuppressor cellに影響を与えていると示唆された。 平成8年度では、さらに5組の生体腎移植患者について同様の検討を行った結果、CD11b/CD8陽性細胞も2.3%から3.8%、4.8%に増加を認め、HLA-DR陽性細胞も増加していた。またMLR抑制細胞の解析では6例中3例に25%以上の減少を認めたことから、単球がsuppressor cellとして働いている可能性が示唆された。 なお、ラット腎移植モデルにおける検討は対象群とDST群のgraft生着率に有意差を認めず中止した。
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