平成7年度は球海綿体誘発筋電図による潜時(hulbo-cavernosus reflex latency time:BCR-L)の成績が実際の臨床像と一致しないことを明らかにした。そこで、新しいインポテンスの神経学的検査の開発と平行して神経刺激による勃起の誘発を種々の方法で検討した。その結果、われわれは硬膜外脊髄刺激用電極と経皮的に神経刺激を行う低周波電気刺激装置を使用した。硬膜外脊髄刺激用の電極は麻酔科領域では疼痛治療に一般的に使用されているものを使用した。硬膜外脊髄刺激は重症感電による下肢の痙性疼痛と排尿障害を有するインポテンス症例に行った。この症例では脊髄電気刺激による勃起の誘発は起こらなかったが、勃起感は得られている。そこで脊髄刺激による陰茎背神経の表面電位を測定して神経経路の損傷の有無を調べた。その結果、この症例では脊髄陰茎背神経の伝導は障害されていることが明らかになった。しかし、脊髄神経の刺激により、下肢の痙性疼痛と排尿障害は改善した。本法は脊髄刺激の方法を改善することによりインポテンスの治療に応用するつもりである。一方、経皮的仙髄刺激による勃起の誘発を試みたが、全く勃起は見られなかった。しかし、経皮的仙髄刺激は茎背神経の表面電位の変化を容易に測定できることが分かった、そこで実際のインポテンス22例の仙髄-陰茎背神経の伝導時間の測定を試みた。結果は22例中17例に仙髄電気刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が測定された。その結果、仙髄-陰茎背神経の伝導時間は平均7.79msecで、所家の報告とほぼ一致するデータであった。本法は経皮的に電気刺激するため侵襲がなく、外来で容易に施行できるよい方法と考えられた。
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