前立腺の発育増殖機構の頂点にはアンドロゲンがあり、その作用により前立腺は発育増殖する方向にスイッチが入る。平成7年度はまず、前立腺上皮機能の指標としては前立腺特異抗原(PSA)、増殖関連因子としてはc-erb-2癌遺伝子とki-67抗原をとりあげ、これらとヒト前立腺形態およびその内分泌環境の関連について検討した。さらに、内分泌環境の変化と前立腺発育増殖の変化との関連にはアポトーシスが関連していることが想定されている。そこでアポトーシス(intranuclear DNA fragmentation)、およびアポトーシス抑制因子(Bcl-2 protooncogene)との関連も検討した。 1.前立腺上皮機能(PSA):男性ホルモンブロック療法により血中PSAは低下するが、このとき前立腺でのPSA染色性の低下がみられ、これは肥大症組織でも癌細胞でも同様であった。 2.増殖関連因子(c-erb-2癌遺伝子、ki-67抗原):ki-67抗原の前立腺での染色性も同様に男性ホルモンブロック療法により低下するが、男性ホルモンブロック療法抵抗例や分化度の低い組織では低下しないことが観察された。c-erb-2癌遺伝子については一定した傾向を見いだせなかった。 3.アポトーシス(intranuclear DNA fragmentation)とアポトーシス抑制因子(Bcl-2 protooncogene):アポトーシス(intranuclear DNA fragmentation)は前立腺房上皮細胞に局在がみられ、アポトーシス抑制因子(Bcl-2 protooncogene)は前立腺導管上皮と基底細胞に局在がみられた。肥大症組織でも癌組織でも、アポトーシス(intranuclear DNA fragmentation)の出現は男性ホルモンブロック療法施工例で多くみられ、アポトーシス抑制因子(Bcl-2 protooncogene)の出現と相反する傾向がみられた。 今後はさらに精密な形態計測学的評価を試み、前立腺組織構築とこられの指標との関係をより計量的に裏付けていきたい。
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