研究概要 |
精巣上体上皮におけるナトリウムポンプ(Na,K-ATPase)の存在および局在を、健常ラットおよび摘出標本より得られたヒトの組織について、頭部、体部、尾部の3カ所に分けavidin-biotin-complex法(ABC法)による免疫組織学的手法により観察検討した。いずれの種および部位においても、その管腔を形成する上皮の主に主細胞の基底側および側膜側に豊富にNa、K-ATPaseが存在することを確認した。また、部位による反応の明らかな差は認められなかった。これら精巣上体上皮において、Na、K-ATPaseが豊富に認められることから、管腔内溶質および水の活発な再吸収が伺われる。つまり、一次輸送体としてNa,K-ATPaseが機能し、ナトリウム勾配を作り上げ、管腔内溶質および水の二次的輸送を惹起しているものと考えられる。すなわち、尾部に至るほでカリウムイオン濃度が相対的に上昇してきているという内腔液の環境形成の原動力としてNa,K-ATPaseの働きが示唆された。一方で精巣輸出管にも精巣上体を上回るNa,K-ATPaseの存在が確認できた。今回の我々の検討により、ヒトの精巣上体におけるNa,K-ATPaseの分布局在がラットとほぼ同様であることが初めて確認された。現在、エストロゲン投与ラット、薬剤的去勢ラットといったホルモン環境変化モデル動物を作製し、免疫組織学的およびウエスタンブロット法により、ホルモン環境の違いによるNa,K-ATPaseの発現の差異を求めている。
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