研究概要 |
これまで我々は、ラットおよびヒト精巣上体管上皮のナトリウムポンプ(Na,K-ATPase)の分布局在、およびホルモン環境変化モデル動物(薬剤的去勢ラット)でのNa,K-ATPaseの分布局在の変化について検討し報告してきた。今回再度、薬剤的去勢ラットのNa,K-ATPaseを検討したところ、薬剤的去勢ラットおよび健常ラットでの各部位における蛋白定量で、体部尾部では両群間に明らかな差は認められなかったが、頭部で薬剤的去勢ラットの蛋白量減少がみられた。ウエスタンブロティング法でも、体部尾部ではタンパクあたりのNa,K-ATPase発現量に明らかな差は認められなかったが薬剤的去勢ラットの頭部でNa,K-ATPase発現量の低下がみられた。このことから、輸出管を含めた頭部が選択的にアンドロゲンの影響を受けている可能性が示唆された。また、薬剤的去勢ラットおよび健常ラットともに、体部に比べ尾部のNa,K-ATPase発現量の低下が見られ、健常ラットで頭部体部尾部の順でNa,K-ATPase発現量の低下がみられた。これらは我々の当初の結果と異なり、1990年のByersらの尾部に行くに従いNa,K-ATPaseの反応が少なくなっているとの報告を支持する所見であった。これまでの我々の報告と異なった結果がでたため、当初予定していたイムノゴールド法による免疫電子顕微鏡的に、分子レベルでのタンパク発現量についてはいまだ検討できていない。光顕レベルでは、確認できないNa,K-ATPaseの低下が考えられたことより、今後分子レベルでのタンパク発現量についての検討が必要である。
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