アルギン酸の薄膜は栄養素は通過できるが、高分子蛋白である免疫グロブリンは通過できない.このためアルギン酸膜で作られたカプセル内に細胞を閉じこめれば免疫反応から隔離することができ、例えばヒトの細胞をマウスの体内で飼うことが可能となる.本研究はヒト癌細胞をカプセルで被包した上でマウスに移植し、in vivoでの抗癌剤感受性試験を行うことを目指したものである. 1.アルギン酸マイクロカプセル被包癌細胞の作成. 被包細胞としてヒト子宮体癌由来Ishikawa株を用い、Limの方法に準じてカプセルを作成した.アルギン酸ナトリウム溶液中に癌細胞を1x10^6個/mlの濃度で懸濁させ、塩化カルシウム溶液中に噴霧するとビーズ状のアルギン酸カルシウムゲルとなる.これをpoly-L-lysinでcotingした後に、更にもう1回、アルギン酸ナトリウム溶液及び塩化カルシウム溶液と接触させ、最後にカプセル内のゲルをクエン酸を用いて再液化した.作成されたマイクロカプセルはalginate-poly-L-lysin-alginateの3層膜からなり、大きさは強度や操作のしやすさから径500ミクロン程度が適当であった.試行錯誤の末、安定したマイクロカプセル被包癌細胞の作成が可能となった. 2.マイクロカプセル被包癌細胞のin vitroでの培養. マイクロカプセル被包癌細胞を培地中に浮遊させ、閉鎖系環境で培養した.位相差顕微鏡下に観察すると、初期には単細胞で散在していた癌細胞がカプセル内でコロニーを作って良好に増殖して行く様子が観察された.この細胞増殖を定量化するため、SDI法で生細胞の酵素活性を指標にして細胞増殖曲線を作成した.この曲線からカプセル内細胞はほぼ指数関数的に増加していることが示された. 試行錯誤を繰り返しながら、アルギン酸マイクロカプセルの作成とin vitroでカプセル内の細胞を増殖させることに成功した.今後カプセルをマウス腹腔内に移植して細胞増殖を確認し、抗癌剤感受性試験を行う予定である.
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