研究概要 |
子宮頚癌の発癌過程にHPV16型のE6およびE7遺伝子、腫瘍抑制遺伝子p53遺伝子変異の関与が報告されている。 子宮頚癌36例、および前癌病変である子宮頚部異形成92例、計128例の77%(99/128)に、low stringent条件のSouthern blot法でHPV-DNAが検出され、HPV感染が子宮頚癌の発癌に関与していることが確認された。しかし、High riskと思われる16,18型の他に既知の型が5タイプ44%、さらに検出頻度の低い型判定不能HPVが多数存在し、これらの型のHPV感染例ではHPV以外の発癌因子が関与している可能性が考えらた。 そこで、Southern blot法でHPV-DNAが検出されなかった9例、型判定不能HPV-DNAが検出された8例、HPV18-DNAが検出された1例、計18例の子宮頚部病変についてPCR-SSCP法でp53遺伝子変異の有無を調べた。エクソン4,5,6,7,8の5領域を解析した結果、p53遺伝子の変異、欠損は認められなかった。 また、HPV陰性の子宮頚癌培養細胞株でp53遺伝子変異が発癌に関与していると報告されており、我々が樹立したHPV陰性Yumoto株に対してp53遺伝子変異の有無を調べたが、p53遺伝子の変異、欠失は認められなかった。さらに、子宮頚部扁平上皮癌培養細胞株のうちHPV陽性7株(CaSki,QG-H,QG-U,SKG-I,SKG-II,SKG-IIIa,SKG-IIIb)においてもp53遺伝子の変異、欠失は認められず、p53遺伝子変異が子宮頚癌発癌機構に関与している可能性は低いと思われる。
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