研究概要 |
子宮頸癌発癌へのHPV感染の関与を検討するために、子宮頸部異形成94例および子宮頸癌37例、計131例の子宮頸部病変の組織DNAを用いて、Southern blot法とPCR法を行いHPV-DNAの型別検出を行った。子宮頸部異形成の81%、子宮頸癌の70%からHPV-DNAが検出されたが、High riskと思われる16,18型の他に既知の型が5タイプ42%、さらに検出頻度の低い型判定不能HPVが多数存在し、これらの型のHPV感染例ではHPV以外の発癌因子が関与している可能性が考えられた。 一方、HPV陰性の子宮頸癌培養細胞株で、変異型p53遺伝子が子宮頸癌の発癌に関与していると報告されている。そこで、子宮頸癌培養細胞株のうちHPV陽性7株と、我々が樹立したHPV陰性Yumoto株において、p53遺伝子異常の有無をPCR-SSCP法を用いて調べたが、変異や欠失は認められなかった。 同様に、子宮頸部異形成9例および子宮頸癌27例、計36例の子宮頸部病変についてp53遺伝子変異の有無を調べ、HPV-DNA陰性頸癌1例にp53遺伝子のエクソン7,8の変異を認めた。しかし、変異を認めたのはHPV-DNA陰性頸癌1例だけであり、p53遺伝子異常以外の因子が子宮頸癌発癌に関与していると考えられた。 また、子宮頸癌の前癌病変である子宮頸部異形成24例を、インフォームドコンセントを行った上でprospectiveに追跡研究して、子宮頸部悪性化の解明を行った。24例中21例が6カ月から15カ月追跡可能で、病変の退行16例76%、不変4例19%、進行1例5%であった。子宮頸部異形成患者の追跡研究は、症例が少なく追跡期間もまだ短いが、21例中病変の不変4例、進行1例、またSevere dysplasia以上の症例が10例あり、今後の追跡が重要と思われた。
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