遺伝子治療の臨床研究の遂行のためには、安全且つ導入効率の高い、ベクターの開発が必須であり、本年度は臨床応用を前提とした新規のリポソームの開発を行い、同時に遺伝子導入効率の検討を行なった。 新規リポソームの作成 1:遺伝子導入効率の高いカチオン脂質を見出すため、リポソーム中の脂質のモル比をDLPC:DOPE:カチオン性脂質=2:2:1に固定し、市販されている約120種類のカチオン性脂質のスクリーニングをin vitroのルシフェラーゼアッセイにて評価した。その結果、市販のリポソームに比較して同等あるいはそれ以上の遺伝子導入効率を示す脂質数種類を選び出した。 2:スクリーニングした120種類のカチオン性脂質の構造とその遺伝子導入効率に付いて検討した。その結果、遺伝子導入効率の高度なカチオン性脂質に置いてスペーサー、脂肪酸等の構造上の特徴を見出した。 リポソームはウイルスベクターと比較して遺伝子導入効率が低い、発現が一過性であるなどの点がその欠点とされてきた。その反面、ウイルス蛋白を含まないため免疫応答を惹起せず、反復投与が可能であり、毒性も低いとされている。細胞の染色体に組み込まれる事が少なく、発現が一過性である事は逆に、導入された細胞の癌化のチャンスも少く、更に薬剤のデリバリーシステムとして臨床投与の実績があり、ウイルスベクターに比較して安全性の点でも優れているといえよう。従来導入効率が低く、1〜4%程度の導入率であるとされていたが今回の我々が新規に開発したリポソームで細胞間で差があるとはいえ10%以上の導入効率が得られた事は大きな進歩と思われる。
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