活性酵素分子種は種々の疾患に重要な役割を演じており、スーパーオキシドラジカルを分解するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、細胞内で発生したスーパーオキシドを除去するscavenger enzymeとしての働きが強調されてきた。今回、Mn-Sodの代謝における役割を明らかにする目的で、雌性ラット生殖器系臓器におけるMn-SOD mRNA の発現を in situハイブリダイゼーション法により詳細に観察し、次の結果を得た。観察は、Zeiss万能顕微鏡により行った。 1 22日令の雌性ラットにPMSGおよびhCGにより過排卵を誘発させた際、(1)内卵胞膜、排卵した卵胞の上皮細胞(顆粒層)、黄体細胞と経時的に発現が増加した。(2)卵管上皮には観察されなかった。(3)排卵12-3時間後をピークに子宮内膜の上皮に観察された。(4)hCG注射3日後(排卵後)以降、腟上皮に著明な発現が認められた。2成ラットの発情同期の各時期で観察すると卵巣では排卵前後に内卵胞膜で、排卵後、顆粒層、黄体細胞に子宮では排卵12-3時間後に内膜上皮に、腟では排卵後、上皮に発現が観察され、いずれも同期変化を示した。このように異なった二つの実験系で相応する時間に同じ発現パターンが観察された。3下垂体摘除ラットの卵巣、副腎における発現は減少した。 これらの卵巣、副腎でのMn-SOD mRNA発現の時期はステロイド(プロゲステロン)合成の時期と一致した。卵巣、副腎に加えて子宮、腟、脳での発現は、ホルモンに誘発されたステロイド合成などMn-SODの細胞内代謝への関与を強く支持するものである。今後、血中ステロイド量の増加した癌細胞症例、アカタラセミアマウスやラット胎生期での発現を発生学の分野でしばしば用いられるwhole-mount in situハイブリダイゼーションの手法を利用し、観察する予定である。
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