活性酸素分子種は種々の疾患に重要な役割を演じており、スーパーオキシドラジカルを分解するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)には、細胞内で発生した毒性の強い活性酸素分子を除去するためのscavenger enzymeとしての役割が強調されてきた。今回、Mn-SODの代謝における役割を明らかにする目的で、雌性ラット生殖器系臓器において過排卵を誘発させた際と発情周期でのMn-SOD mRNAの発現をin situハイブリダイゼーション法により詳細に観察し、次の結果を得た。 卵巣では排卵前後に内卵胞膜と排卵した卵胞の上皮細胞(顆粒層)で、排卵後、顆粒層と黄体細胞に、また子宮では排卵12-3時間後をピークに内膜上皮に観察された。膣上皮やエストロゲンの結合サイトを持つ子宮の好酸球が強い発現と周期性変化を示した。卵管上皮には観察されなかった。子宮、膣での発現はエストロゲンを注射することにより誘発できた。 卵巣でのMn-SOD mRNA発現の時期はステロイド(プロゲステロン)合成の時期と一致した。卵巣、子宮、膣での発現は、ホルモンに誘発されたステロイド合成などMn-SODの細胞内代謝への関与を強く支持するものである SODにより発生した過酸化水素を分解する酵素、カタラーゼ、をもたないマウス(アカタラセミアマウス)でのMn-SODの動向を検索するために、マウス用のプローブを合成し、膣での発現の観察に利用している。現在、卵巣、子宮での発現を検索中であり、マウスの胎仔をもちいたwhole-mount in situハイブリダイゼーション法も行う予定である。また、血中ステロイド量の増加した癌細胞症例を中心としてその発現を観察するには、ヒト用のプローブが必要であるので、マウス用と同じ手法で作成中である。
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