研究概要 |
産褥ラットの全乳腺組織を摘出し,コラゲナーゼ処理とパーコール遠心分離により上皮細胞層のみを回収し,コラーゲン・ゲル上にて乳腺上皮細胞の初代培養系を確立し得た。この培養系を用いて,まずPTHrPの基礎分泌状態を知るために,培養開始後経時的にその上清を採取し,上清中のPTHrP濃度を測定した。その結果,上清中のPTHrP濃度は培養開始後48時間後まで経時的に増加し,その後はプラトーに達した。また非妊娠,妊娠ラットの乳腺についても同様の検討を試みたが,上清中のPTHrP濃度は測定感度以下であった。 次に乳汁中のホルモンや成長因子の多くが初乳に高濃度に含まれるのに対して,PTHrPは初乳で低濃度で産褥経過に伴い増加することと,妊娠ラットの乳腺ではその発現が非常に弱いが,産褥ラットの乳腺では発現が増強することから,胎盤由来のホルモンや成長因子がPTHrpの産生・分泌に抑制的に作用する可能性を想定し,産褥ラットの乳腺上皮細胞の初代培養系に,エストロゲン,プロゲステロン,ビタミンD,デキサメタゾン等のホルモンを添加して,24時間後に上清を回収し,そのPTHrP濃度を測定し,コントロール群と比較検討した。その結果,エストロゲン,ビタミンD添加ではコントロール群と差がなく,プロゲステロンあるいはデキサメタゾン添加によって有意に抑制された。 今後はさらにその作用機序を知るために,受容体阻害剤の添加によりこれらの抑制が解除されるかどうか等を検討していく予定である。
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