第一度無月経患者の多くは多襄胞性卵巣症候群(PCOS)様の高LH/FSH比、高アンドロゲン、高E1/E2比の内分泌環境を示すことが示された。それらの症例のうち19/32(59%)ではBMIが24以上の肥満を合併しており肥満とPCOSの関連性が確認された。肥満合併無排卵群と正常体重無排卵群に分離して検討を加えると、高アンドロゲン、高E1E2比の性ステロイド環境に差は認められなかった。肥満合併無排卵群、正常体重無排卵群供に、インシュリン過剰分泌、高/LH/FSH比は認められたが、肥満合併無排卵群ではインシュリン過剰分泌が有為に顕著であり、正常体重無排卵群ではLHの過剰分泌が有為に顕著であった。以上のことよりPCOSにはインシュリン抵抗性によるインシュリン過剰分泌が直接的な原因である群と、間脳下垂体系のLH、FSH分泌の異常が直接的な原因である群の2群が存在すると考えられた。 肥満を合併し、かつインシュリン過剰分泌を示すPCOSに対して綿密な生活指導下にカロリー制限を行うことにより、5/7症例にBMIで5以上の体重減少が得られた。体重減少が得られた3/5症例に自然排卵周期の回復が認められ、2/5症例にクロミフェンによる排卵誘発により排卵周期が得られた。自然排卵周期が認められた症例ではインシュリン過剰分泌も正常上限まで低下し、性ステロイド環境、ゴナドトロピン環境も正常化しているのが確認された。肥満を伴った排卵障害患者では有意に高い高血糖を認めており糖尿病のハイリクス群と考えられる。そこで肥満を伴った排卵障害症例に対してはただ単に排卵誘発を進めるのではなく、そのホルモン環境、インシュリン分泌を検討した上でカロリー制限などの生活指導をしていくことが排卵周期の回復だけでなく、妊娠分娩を含めた将来的な健康にとって重要である。
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