研究概要 |
エストロゲンによって誘発されるLHサージは視床下部細胞からのLH-RH放出を介して起こる。しかし、現時点ではエストロゲン上昇とLH-RH放出の間に関与する分子的メカニズムはわかっていない。このメカニズムを解明するために、我々は、視床下部においてエストロゲンによって発現する分子をdifferential displayシステム(RNA map法)にて検出することを試みた。 サンプルとして雌ラット20匹の卵巣を摘出後、10匹にはエストロゲン(40μg)を2回に分けて投与し、その翌日、無処置10匹とともに視床下部を取り出した。また、別に雄ラット10匹を去勢後、同様にエストロゲン処置したものを用意した。これら3群のうち、雌性性行動、LHサージが発現するのはエストロゲンを投与した雌ラットのみである。これら3群の視床下部よりRNAを抽出し、differential displayシステムにより3群間でのmRNAの発現の違いを調べた。 この方法により、エストロゲン処理した雌視床下部にのみ発現するmRNAを2種、エストロゲン無処置の雌のみに発現するもの3種、エストロゲン処置の有無に関係なく雌視床下部に発現する(雄には発現が見られない)もの5種、逆に雄のみに発現するもの5種をそれぞれcDNAの形で得た。特に本研究のテーマである、エストロゲンと雌性性行動およびLH-RH放出の間に関与するであろうエストロゲンで誘導される2種(1TE,2TE)、あるいは発現が抑制される3種(2GS1,2GS2,2GS3)について、塩基配列を決定した。これを基にそれぞれに対してprimer pairを作り、それらの発現が性周期により変化するかどうかRT-PCR法にて調べた。1つ(1TE)を除き、性周期(発情前期10,12,14時、発情期12時、発情間期の視床下部で比較)による変動はみられなかった。1TEに対するprimerを用いたRT-PCRでは、発情前期12時より発情期12時に発現がみられるPCR産物を新しく同定した。現在、完全長cDNA単離を試みている。またこのPCR産物を用いて、ノーザン解析したところ発情前期にのみ特異的に発現するmRNAを観察しており、これについても現在cDNA単離を行っている。
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