Antigonadol作用を有するmelatomimの血中レベルは思春期発達段階で減少することからmelatoninと思春期発来との関連が示唆されているが、その生理学的役割については未だ明確だはない。本研究により、melatoninのgonadotropin分泌抑制作用は、視床下部からのGnRH pulseの発現を減弱させる機序に基づくことが明らかとなった。また病態学的には中枢性の続発性無月経患者では夜間のmelatonin分泌が著明に増量しており、このmelatoninの分泌増加は本患者の内因性エストロゲン環境が強く関連していることが示された。すなわち、melatonin分泌に対してはgonadol-pineal feedback機構が存在することが強く示唆された。今回、さらに性機能系が発育発達する段階での松果体臓器のmelatonin産生動態を、特にgonadol-pineal feedback機構に注目し検討した。ラットにおいては生後6週齢で初回排卵が認められるが、melatonin産生能は生後から膣開口期の6週にむけて増量し、以後排卵周期の確立の過程で低下することが示された。一方6週齢で卵巣を摘除した群では、排卵周期確立過程でのmelatoninの減少はみられず、逆に著明な増加が示された。さらに、卵巣摘除ラットに外因性にエストロゲンを負荷することで、正常ラットと同一のmelatonin産生動態を再現することが可能であった。しかしプロゲステロン投与では、明らかな影響は認められなかった。従って、排卵周期確立周辺過程でのmelatonin産生能は、卵巣より分泌されるエストロゲンにより強く調節されていることが明らかとなった。melatonin生合成ではN-acetyltransferase(NAT)とHydroxy-O-methyltransferase(HIOMT)がkey enzymeであるが、melatonin産生能は正常ラット、卵巣摘除ラット、エストロゲン負荷ラット共にNAT活性に強く相関することからNAT活性に強く規制されていることも明らかとなった。また、エストロゲン負荷ラットにおいては少量のエストロゲンではNAT活性だけが抑制され、大量のエストロゲン負荷によりNAT、HIOMT活性共に抑制されることから、エストロゲンに対する感受性には両酵素間で明らかな差のあることが示された。一方、melatonin産生を刺激するノルエピネフリル活性は生後4週ですでに成熟レベルに達すること、又卵巣摘除およびエストロゲン負荷により明らかな影響は認められなかった。今回の一連の研究から、性機能系の発達過程でのmelatonin産生能は、卵巣より分泌の増量がみられるエストロゲンがNAT活性を調節することで強く影響していることを明らかにした。
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