研究概要 |
子宮頚癌細胞株、HPV16型フルゲノムを導入した正常ヒト角化細胞,PHK16についてHPVのタイプ及びE6/E7領域の発現を検討した。SiHa細胞;PHK16細胞では16型HPVが、C4II細胞では18型HPVDNAが保存されており、いずれのタイプのHPVもE6/E7領域の発現を認めた。E6,E7の翻訳開始点を含み、かつ既知の癌遺伝子と最もホモロジーの低い2カ所の領域の塩基配列に対するホスホロチオエ-ト型アンチセンスオリゴDNA(AS)を作成した。各細胞にASを添加し、その増殖特性に与える影響を観察した。5mMのASを48時間ごとに投与した結果、コントロール(ナンセンスオリゴDNA)に較べ、著明な増殖抑制効果が観察された。しかし.SiHa細胞では増殖抑制効果は認められなかった。E7蛋白量の変化を免疫沈降法で観察した結果、PHK16ではAS投与により著明に減少していたがSiHaでは減少の程度は軽微であった。従ってE6/E7に対するASは標的蛋白量を減少させることによりその増殖抑制効果が発現されると考えられた。SiHa細胞においては標的蛋白量の変化が軽微であったためASによる細胞増殖抑制効果が認められなかったと考えられた。SiHa細胞におけるASの細胞内動態を検討した結果、AS添加24時間後には99.8%の細胞にASの取り込みと供に核内への集積が観察された。そこで、ASの標的mRNAへのハイブリダイズをより強固にするために、ソラーレン結合型ASを作成し、SiHa細胞の増殖特性に及ぼす影響を観察した。ソラーレン結合型AS0.5mM添加により細胞増殖の完全な抑制が観察された。コントロールとして用いた正常ヒト角化細胞には増殖抑制効果は観察されなかった。従ってソラーレン結合型ASはホスホロチオロ-ト型ASの1/10以下の量で細胞増殖抑制効果を有することが判明した。
|