研究概要 |
1.正常子宮頚部扁平上皮細胞にHPV18-DNAを導入して不死化細胞(HEC-18)を作成した.crisis前はエピゾームに100コピー以上のHPV18-DNAがみられたが,crisis後にはHPV18-DNAは数コピーのものがインテグレイトされていた. 2.我々が保有する頚癌由来細胞株TMCC-1およびME180に,wild type(WT)p53の全DNAを持つpMO-hp53(dexamethasone存在下でwild type p53遺伝子の発現が誘導されるプラスミド)を燐酸カルシウム法によって導入し,transfectantをクローニングし,個々のクローニングの増殖能,形態変化を観察した. その結果,移入したWTp53遺伝子は細胞増殖と形態および腫瘍作成能に影響を与えた.すなわち, 1)細胞はG2の位置で細胞回転が停止し,増殖が抑制された. 2)細胞膨大,多核形成,核の微小化,細胞質の均一化などの形態変化がみられた. 3)軟寒天培地における自由増殖能が失われた. 上記の結果は腫瘍細胞の増殖ならびに活性が,p53遺伝子の移入により大きく障害されることを示している. また,その後の詳細な細胞形態変化の解析から,細胞増殖抑制はM期において起こっていることが示唆された. 上記のように,研究は当初計画した通りに進行しており,また,その結果も期待を裏切らないものである.他の頚癌細胞株にも応用してその汎用性を確かめるとともに,遺伝子分析を進めて抑制機構を解明することによって,遺伝子治療への道を開きうるものと期待される.
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