研究概要 |
1.ヒト正常子宮頚部の扁平上皮および円柱上皮より初代細胞培養を行い,それらにHPV16もしくは18型をtransfectして不死化させた子宮頚部細胞株,およびそれらを造腫瘍性を有するような悪性に形質転換させた細胞株をそれぞれ樹立して,in vitro多段階発癌モデルを完成した. 2.cyclin dependent kinase(cdk)inhibitorであるp16は多くの癌でホモ欠失や点突然変異が報告され,その不活化はRb蛋白のリン酸化を誘導し,細胞周期への影響から発癌に貢献するとされている.われわれの樹立した多段階発癌モデルにおけるp16の発現をNorthern blot abaysisとWestern blot analysisで,点突然変異をPCR-SSCP法で検討した. p16遺伝子はHPVで不死化させた後では明らかに過剰発現していたが,悪性形質転換の前後では変化は認められなかった.点突然変異はいずれの段階でも検出できなかった.また,p16の不活化はin vitro,in vivoともに認められなかった.Rb蛋白の不活化がHPV蛋白によってすでに生じている頚癌および前癌病変では,p16の不活化は発癌に必要ではないと考えられた. 3.我々が保有する頚癌由来細胞株TMCC-1およびME180に,wild type(WT)p53の全DNAを持つpMOーhp53(dexamethasone存在下でwild type p53遺伝子の発現が誘導されるプラスミド)を燐酸カルシウム法によって導入し,transfectantをクローニングし,個々のクローニングの増殖能,形態変化を観察した. その結果,移入したWTp53遺伝子は細胞増殖ならびに活性を大きく傷害した. また,その後の詳細な細胞形態変化の解析から,細胞増殖抑制はM期において起こっていることが示唆された.
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