研究概要 |
〔目的〕 エストロゲンの低下する更年期には性器症状に加えて、気力減退、不安といった精神神経症状がみられる。ドパミン(DA)ニューロンの機能亢進では舞踏病が、低下では運動障害や思考の遅延が起こる。このことはDAニューロンへのエストロゲンの関与を示唆する。我々は去勢ラットで運動量が低下し、エストロゲンの補充により回復することを既に報告した。今回更にエストロゲンの脳内DAニューロンに及ぼす作用機序を解明する為に、マイクロダイアリシス法を用いて検討した。〔方法〕SDラット(8週齢)を卵巣摘出(卵摘)群(n=5),卵摘+エストロゲン投与(E2)群(n=5),コントロール(C)群(n=5)に分けた。E2はestradiol valerate20μgを週2回、12週間皮下注した。マイクロダイアリシス法はE2投与終了後ラットの頭蓋骨にガイドカニューレを固定し、透析膜プローブを線条体に挿入して人工髄液1μl/minで還流し、還流液中のDA及びその代謝物質を高速液体クロマトグラフィーで測定し細胞外DAの基礎量及びmethamphetamine(MA)投与による細胞外DAの変化を検討した。〔成績〕(1)ラット線条体の細胞外DAの基礎放出量は卵摘群で1.6±0.2,E2群で5.4±1.6,C群で3.9±0.8(fmol/min)であり卵摘によりDAの基礎放出量は有意(P<0.01)に低下し,E2補充により回復した。(2)MA投与による細胞外DAの反応は卵摘により低下し,E2補充により正常化した。〔結論〕去勢による運動量低下はDA放出の低下に起因することを明らかにした。細胞外DAの基礎放出量の低下とMA投与による増加量はE2投与により改善した。以上よりエストロゲンはDAニューロンにおけるDA放出に作用している可能性を明らかにした。
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