本年度は、まず、平成7年度に合成した4本のヌクレオチドプローブに対して、biotin分子を標識架橋した。化学修飾されたプローブは2本がDNA検出用であり、別の2本がRNA用である。次にこれを用いて、ヒト胎盤組織(妊娠6-42週齢)に対してin situハイブリダイゼーション(ISH)を実施した。ISHは、非放射性の酵素(HRP)標識法を用いてシグナルを検出した。ここでは、次年度に計画されているPRC(polymerase reaction chain-in situ hybri-dization method)法による検索の予備段階として実施したISHの所見について報告する。 結果:DNA検出用プローブを用いたISHでは、胎盤絨毛の結合組織に分布している胎盤性マクロファージ(Hofbauer cell)の核に、またRNA検出用プローブを用いた場合には、Hofbauer cellと上皮性のLanghans cellの細胞質に、それぞれシグナルが検出された。これらの所見は、カルシウム-結合タンパクであるMRP8の免疫組織化学の局在と一致したものであった。しかも、それら両者の結果は、いずれも妊娠早期の胎盤に特徴的であり、妊娠週齢7-10週のものに限って観察された。 次年度は、これらの所見の再現性を追及することと、PRC法による増強試験を通じて検索し、研究を総括する予定である。
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