研究概要 |
1.妊娠中毒症と接着分子 妊娠中毒症が一種の母児間免疫学的適応不全の状態を反映するものとの観点から、免疫担当細胞と血管内皮細胞との相互作用の妊娠中毒症の病態形成に及ぼす影響を検討した。末梢血NK細胞活性は妊娠中毒症重症例のなかで、高度の蛋白尿を伴う症例、および胎内発育遅延(IUGR)を伴う症例で有意に高かった。このことがNK細胞そのものの活性が上昇しているのか、CD16陽性、あるいはCD56陽性を示すLGLの割合が増加しているのかについては現在検討中である。培養血管内皮細胞を20%患者血清の存在下で培養し,ICAM-1発現状況をFlow Cytometryで観察すると、妊娠中毒症患者血清の添加は血管内皮細胞上のICAM-1発現を増強させることが明らかとなった。 妊娠中毒症重症患者血清中には血管内皮細胞上のICAM-1発現を増強させる因子が存在すると考えられた.血管内皮細胞上のICAM-1発現の増強は,白血球,リンパ球,特にNK細胞などの細胞傷害活性をもった細胞との接着の機会を増加させ,血管内皮細胞障害,ひいては妊娠中毒症へと進展させて行く可能性が示唆された. 2.流産と接着分子 習慣流産モデルマウスCBA/JxDBA/2のmatingにおいて膣栓確認日を妊娠第0日として第1-2日目より抗ICAM-1抗体、抗LFA-1抗体を5日間腹腔内投与を行うと無処置群に比し、有意に低い流産率が観察された。本実験は予備実験の段階であり、現在詳細な検討を行っている。
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