研究概要 |
研究機器のセットアップおよび実験条件の設定を完了し、さらに実験終了後の血管標本を抗factor VIII抗体で染色し、血管内皮細胞が保たれていることを確認した。 実験は、正常妊娠の胎盤絨毛膜板上の動・静脈のリング標本を作成して、各種血管作動物質に対する反応を検討した。血管収縮物質としてAngiotensin II, Serotonin(5-HT), Phenylephrine, Endothelin-1(ET-1), U-46619を用いたが、胎盤血管ではAngiotensin II, Phenylphrineに対する反応がないことが明らかとなった。また血管収縮の強さは、U-46619>ET-1>5-HTの順であり、動脈と静脈を比較するといずれの物質においても静脈の方が収縮が強かった。 ET-1の5-HTの収縮に対する特異的増強効果が他の部位の血管で報告されているが、胎盤絨毛膜板結果でも同様の増強効果が確認された。 一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤であるL-NAME、Cyclooxygenase阻害剤であるIndomethacinの投与によりET-1,5-HTによる収縮は動・静脈とも増強した。このことは、ET-1,5-HTによる血管収縮時に血管内皮細胞より血管弛緩物質であるNOやPGI_2が放出され、血管のトーヌスをコントロールしていることを示している。特に5-HTによる収縮の際にNOやPGI_2の関与が大きく、L-NAME投与によりNO合成を阻害した時の5-HTによる収縮は、ET-1単独投与時の収縮力、反応性と同程度であった。 妊娠中毒症時にはET-1,5-HTともに血中濃度が上昇するが、5-HTの濃度の方が高いため、妊娠中毒症のようなNO産生が抑制された状態では、5-HTが高血圧の主因であることが示唆された。
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