研究概要 |
昨年度までの結果で,一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤であるL-NAME、Cyclooxygenase阻害剤であるIndomethacinの投与によりET-1,5-HTによる収縮は動・静脈とも増強する事を報告した。このことは、ET-1,5-HTによる血管収縮時に血管内皮細胞より血管弛緩物質であるNOやPGI_2が放出され、血管のトーヌスをコントロールしていることを示している。特に5-HTによる収縮の際にNOやPGI_2の関与が大きく、L-NAME投与によりNO合成を阻害した時の5-HTによる収縮は、ET-1単独投与時の収縮力、反応性と同程度であり生体内で高濃度である5-HTの影響は大きい。 今年度は、さらに同様な実験で収縮がより増強するのを期待しL-NAMEとIndomethacinを同時投与し5-HTを投与したところ,かえって収縮力が減弱した。このことについては現在検討中であるが,未だ結論は得られていない. EstrogenやProgesteroneが収縮力に与える影響について検討をするためにSteroid hormoneをエタノールに溶解し投与したところ,エタノールそのものが血管に作用することが明らかになった。このためまずエタノールの収縮に及ぼす影響について検討した。preliminaryなデータであるが,低濃度(0.05-0.2%)では血管収縮に働き,高濃度(0.4-1.0%)では血管拡張作用をもっていることが明らかになった。生体内では一般にエタノールは血管拡張に働くとされているが,神経因子の作用も大きく影響しているものと思われ,神経性調節機構を持たない胎盤血管における結果は,胎児性アルコール症候群の兆候の一つである子宮内胎児発育遅延の原因を説明しうるものであろう。今後はさらにSteroid hormoneの影響について検討していく予定である。
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