研究概要 |
Estrogenが収縮力に与える影響について検討するためにsteroid hormoneをethanolに溶解し投与したところ,ethanolそのものが血管に作用することが明らかになった。生体内では一般にethanolは血管拡張に働くとされているが,神経因子の作用も大きく影響しているものと思われ,神経性調節機構を持たない胎盤血管に対する影響は,胎児性アルコール症候群の兆候の一つである子宮内胎児発育遅延の原因の究明のためにも重要である。なお収縮の強さは、Krebs-Ringer-Bicarbonate BufferのNaClをKClに置換した溶液による収縮(K^+-拘縮)を100%として表現した。 Ethanol(0.2〜4.0%)の添加により胎盤血管は濃度依存性に収縮し,重度酩酊時の血中濃度は0.35から0.45%とされているが,0.4%の時の収縮は,動脈で4.7±2.5%,静脈で3.3±2.5%であった。この収縮力はわれわれが以前検討した,強力な血管収縮物質であるendothelin-1の1nM添加による収縮とほぼ同程度であった。また4%ではそれぞれ48.4±8.8%,43.1±17.8%(mean±SD,n=5)であった。Ethanolによる収縮の一部は、sodium nitroprussideやverapamil、caffeinにより抑制された.また4%ethanolは,K^+-拘縮を59.6±15.0%へと有意に抑制したが、K^+-channel blockerであるtetraethylammonium(TEA)によりK^+-拘縮の抑制作用の一部は阻害された。 以上の結果より、ethanolは胎盤絨毛膜盤血管に対しCa^<++>-channelを介した細胞外Ca^<++>の流入とともに、細胞内Ca^<++>の放出により、収縮作用を表すことがわかった。また同時に、TEAの結果より内皮由来過分極因子(EDHF)様の作用も持っていることが示された。今後はこの結果をふまえさらにsteroid hormoneの影響について検討していく予定である。
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