研究概要 |
【目的】HPV16型(HPV16)感染による子宮頚癌の発症機序を明らかにする目的で,HPV16感染陽性の子宮頚部異形成(異形成)における細胞の消退特性(Apoptosis細胞比率:%Apo)および増殖特性(PCNA陽性細胞比率:%GF)と,p53蛋白(p53)やbcl-2蛋白(bcl-2)の発現との関連性を検討した.【方法】異形成44例を対象とし,その10%緩衝formalin固定paraffin包埋組織を材料とした.HPV16はDNA probeを用いたin situ hybridization法にて,p53, bcl-2の発現およびPCNA陽性細胞はmicrowave処理後,免疫組織化学染色法にて,Apoptosis細胞はTUNEL法にて検出した.p53,bcl-2の発現は,5%以上の細胞が染色された場合を陽性とし,%Apo,%GFは500細胞以上中に占める染色陽性細胞の百分率とした.【成績】1)HPV16は23例(52%)に検出され,そのうちp53陽性は13例(57%),bcl-2陽性は7例(30%)であった.%Apoはp53陽性群と陰性群の間で差はないが,bcl-2陽性群(4.12±3.07%)では陰性群(8.26±3.93%)に比し有意な低値を示した.%GFはp53陽性群(18.38±7.56%)では陰性群(15.24±9.98%)に比し高値を示したが,bcl-2陽性群と陰性群の間で差はなかった.2)HPV16は中層から表層の異型細胞やKoilocyteに検出され,Apoptosis細胞は中層から表層に,PCNA陽性細胞は旁基底層から中層に局在し,p53は旁基底層と一部中層の細胞に,bcl-2は中層の細胞に検出された.なお,HPV16陽性細胞のほとんどは,TUNEL法でも染色された.【結論】HPV16感染細胞はApoptosisに陥る.しかし,異形成ではbcl-2発現によるApoptosisの抑制とp53発現に伴う増殖特性の亢進とにより細胞増殖動態が増進する.
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