【目的】HPVに伴う子宮頚癌の発症過程における細胞の消退特性(Apoptosis細胞比率:%Apo)および増殖特性(PCNA陽性細胞比率:%GF)の増減とp53、bcl-2、WAF-1などの遺伝子蛋白の発現との関連性を検討し、前癌病変である異形成での予後因子を明らかにすることを目的とした。 【方法】正常上皮10例、軽度・中等度異形成(CINI・II)15例、高度異形成・上皮内癌とした。HPV感染の有無は、HPV16-DNA probeを用いたISH法および抗HPV16/18-E6抗体を用いたABC法により判定した。p53、bcl-2、WAF-1およびPCNA陽性細胞はABC法により、Apoptosis細胞はTUNEL法で検出した。%Apo、%GFは500細胞中に占める染色陽性細胞数の百分率とした。 【成績】HPV感染陽性と判定した正常上皮7例、CINI・II14例に比べCINIII24例、浸潤癌10例について以下の結果を得た。1)%ApOはCINI・II群に比べCINIII群で有意に低下し、%GFは正常上皮群に比べCINI・II群で、及びCINI・II群に比べCINIII群で有意に増加した。2)正常上皮に比べCINではp53、WAF-1の発現率は増加し、wt-p53の発現率は減少したが、bcl-2発現率に変化はなかった。3)CIN病変において%Apoの減少にはbcl-2の発現とwt-p53の発現消失が関与し、一方、%GFの増加にはp53、WAF-1の発現の増加が関与している。 【結論】異形成が上皮内癌、浸潤癌へと進展する予後を推定する指標として、wt-p53の発現消失およびp53、WAF-1の発現増加が考えられる。
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