研究概要 |
血中LH値が市販の測定キットで測定感度以下を示した患者および家族のLH-β遺伝子の2ヶ所で点突然変異があり,第8番目と15番目のアミノ酸がそれぞれTryからArg,IleからThrに置換されるhCGtypeのアミノ酸変異を報告した。この変異LHの意義を検討するためにrestriction fragment polymorphism(RELP)を用いて,不妊症例106人(I群:排卵障害例56人、II群:正常排卵例50人)およびコントロールとして正常経産婦113人(III群)と他科外来通院中の男性患者119例(IV群)を対象として検討した。I群、II群、III群およびIV群で、変異LHのホモの頻度はそれぞれ0/56(0%),1/50(2.0%),1/113(0.88%)および2/119(1.7%)で各群で差がなく、変異LHのヘテロの頻度は6/56(10.6%),5/50(10%),10/113(8.8%)および10/119(8.4%)で同様に差がなかった。また排卵障害例の中でも血中LH値がが高値を示す多嚢胞性卵巣症候群(PCO)の16例の変異LHの頻度をみると、ホモの例はなかったが、ヘテロは11.1%でほとんど差がなかった。また血中LH値を市販のSPAC-S kit(LH-SPAC)およびIMX kit(LH-IMX)で測定すると,その比(LH-SPAC/LH-IMX)はI群とII群では若干の差があるもののワイルドタイプで0.93〜0.94,変異LHのヘテロで0.47〜0.48,ホモで0となり、各遺伝型とよく相関した。しかし、PCOではワイルドタイプの16例で0.84、変異LHのヘテロでは0.43とやや低値を示す傾向が認められた。以上のことから、この変異LHの存在は排卵や妊孕能に大きな影響を及ぼしていないと示唆されるが、変異LHのin vitroでの生物学的活性の高い結果や進化の過程から変異LHを持つ症例のhCGの塩基配列の分析など残された課題も多い。また臨床的には測定法の種類により血中LH値の判定には注意を要する。
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