妊娠子宮筋の収縮一弛緩のサイクルは他の平滑筋と同様に、細胞内自由Calcium濃度によって調節される収縮蛋白の燐酸化によるものと考えられている。最近、Somlyoらの報告のように細胞内Calcium濃度は同一であっても、G-蛋白を介した細胞内情報伝達系が収縮蛋白燐酸酸化を修飾する機構が考えられている。そこで、受容体を介さない過剰ポタシウムと受容体を介するcarbacholによる収縮反応と細胞内Calcium濃度の同時記録を妊娠ラット子宮の生筋にて試みた。この二つの収縮刺激剤にて細胞内Calcium濃度はほぼ同濃度であるにもかかわらず、carbacholによる収縮は過剰KClによる収縮の約1.5倍の張力を示した。この実験から、受容体を介するcarbachol収縮は電位依存性のCalcium流入による収縮より収縮蛋白のCalcium感受性が増加していることが示された。またskinned-fiberの実験にてphosphatase阻害剤である岡田酸がCalciumによる収縮を増強したことから、収縮蛋白の脱燐酸化を抑制することによるG-蛋白を介したCalcium感受性の増強機構の存在が妊娠子宮においても示された。ラット妊娠子宮でOxytocin、ProstaglandinF_<2α>やProstaglandinE_2にてもG-蛋白を介する同様の収縮蛋白の修飾作用が示された。陣痛と深く係わると考えられているoxytocinやProstaglandinF_<2α>とProstaglandinE_2がG-蛋白を介した収縮蛋白の脱燐酸化の抑制と関連することがラット妊娠子宮で示されたことは有効な陣痛力を理解するうえでに意義があると思われる。
|