子宮体癌のなかには、原発巣が体部に限局しているにもかかわらず、術中腹腔細胞診が陽性になる例がある。癌細胞が腹腔内へ出現する経路として、経卵管性が考えられ、その機序として、接着分子、特にインテグリンの原発巣における発現に注目した。1993年から1995年までの当院新鮮摘出標本の癌巣割面の捺印標本におけるインテグリンの発現をβ1鎖とβ3鎖をそれぞれ認識するモノクローナル抗体(Takara)を用いてABC反応による免疫染色を行った.検討対象は筋層浸潤1/2以下でリンパ節転移のない症例46例と、筋層浸潤の欠如した症例29例である。術中腹腔細胞診の結果は前者が46例中8例、後者が29例中4例が陽性であった。結果は前者では、内膜型腺癌G2の術中腹腔細胞診陽性4例は皆β3インテグリン強陽性であった(96臨床細胞学会秋)。後者では、術中腹腔細胞診陽性例は皆β1インテグリンの発現がないこと、臨床検討では閉経前または閉経早期であることが示された(96癌学会)。従って、経卵管的に腹腔内へ癌細胞が出現する機序として、原発巣におけるインテグリンの発現が関与する可能性が示唆された。 今後の検討はこれらの経卵管的に腹腔内へ出現した癌細胞がなぜ腹膜播種に進行しないのか、基礎ならびに臨床的に検討していく。この検討対象には、子宮体癌のみならず、胃癌を取り上げた。胃癌の卵巣転移の成因について、リンパ行性か腹膜播種かについて検討し、今年の癌治療学会で発表する予定である。基礎検討については、腹腔内へ出現した癌細胞について検討を加える。
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