スギ花粉症に対する抗体陽性率と発症率:11歳までに45.9%の学童はスギ花粉に対するIgE抗体陽性であった。陽性率は20〜40歳代には66.0%に達し、以降加齢とともに急激に低下した。スギ花粉抗体陽性者における発症率は、11〜15歳では41.2%であるが、20〜40歳では59.5%に達し、発症率は抗体価が増すにつれて上昇した。しかし、CAP RASTスコア6を示すものにおいても発症率は、11〜15歳の学童では62.5%にとどまり、一方、20歳以上の成人では92.9%に達している。若年者におけるスギ花粉症の発症には年齢も大きく関与する。 抗体陽性者の発症に関与する因子:発症には3親等以内のスギ花粉症の素因が強く関与し、また通年性鼻アレルギー(ダニ)の合併はスギCAP RASTスコア3以下の抵抗体価症例群において発症率を有意に上昇させた。通年性鼻アレルギーの合併はスギ抗体陽性者におけるスギ花粉症の発症時期を有意に早めた。通年性鼻アレルギーのために亢進していた非特異的鼻粘膜過敏性がスギ花粉症の発症に関与した可能性が考えられる。 自然治癒:15〜20年間追跡した大学病院アレルギー外来登録症例におけるHD・ダニを抗原とする中等症以上の通年性鼻アレルギー症例の自然緩解率は、症状消失8.7%、著明改善29.3%にすぎず、また1995年のスギ花粉大量飛散期に評価したスギ花粉症の自然緩解率は、症状消失0%、著明改善7.4%にとどまった。一方、住民検診におけるスギ花粉症の自然緩解率は8.9%であり、自然緩解は特に高年齢発症者およびスギ花粉症の素因の無いものにみられた。大学病院登録症例では、HD・ダニを抗原とする通年性鼻アレルギーとスギ花粉症の自然緩解率に明らかな差を認めたが、これは成人におけるダニとスギに対するIgE抗体量の差、特にダニに対する高抗体保有者が加齢とともに急激に低下するためと考えられる。また、大学病院登録症例と住民検診対象者におけるスギ花粉症の自然緩解率の違いは重症度の違いによるものと考えられる。
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