研究概要 |
1、内耳におけるP-糖蛋白局在の証明 モルモットの内耳を取り出してEDTAにて脱灰し、超低温槽に保存。その後クライオスタットで8μmの切片を作成した。これにP-糖蛋白抗体であるC219を反応させた後、さらにウサギ抗マウスIgGを反応させてABC法で免疫染色後DABで発色させ、光学顕微鏡で観察した。その結果、C219に染色される毛細血管は蝸牛血管条、ラセン靭帯、蝸牛軸、らせん神経節を含む蝸牛神経内、さらに前庭や三半規管膨大部、内リンパ嚢に認められた。しかし、蝸牛の外側骨格である骨組織の毛細血管には染色性は認められなかった。されに、脳組織や蝸牛側壁、コルチ器、蝸牛軸内神経、前庭の各組織をホモジネートし、Western blotを行うと、いずれにもP-糖蛋白である170kDaのバンドが認められた。以上の結果より、血液一脳関門と同じように、内耳においても毛細血管壁のP-糖蛋白が血液一内耳関門機能の一部を担っている可能性が示唆された。 2、内耳におけるG蛋白局在の証明 モルモットの蝸牛を取り出してEDTAにて脱灰し、上記1と同様に8μmの切片を作成する。これにGl,Gs,Go蛋白抗体を反応させた後、ウサギ抗マウスIgGを反応させてABC法で免疫染色後DABで発色させ、光学顕微鏡下に観察した。その結果、Gi,Gsではほぼ同程度の染色性を蝸牛有毛細胞や血管条に認めた。一方Goでは、蝸牛有毛細胞や血管条の他にらせん神経節内神経線維や蝸牛神経線維にかなり強い染色性を認めた。さらに、コルチ器や蝸牛側壁、蝸牛軸内神経の各組織をホモジネートしてWestern blotを行うと、いずれの組織にもGiとGoでは約40kDa、Gsでは約40と45kDaの二つのバンドを認めた。以上のように、コルチ器や蝸牛神経、血管条の細胞にG蛋白が発現していることから、内耳におけるシグナル伝達においては、これらの細胞や組織が中心的役割を果たしていることが裏付けられた。
|