研究概要 |
動物(ウサギ)の聴力評価を安定した状態で施行可能とするため、動物実験施設内に聴性脳幹反応(ABR)の測定系を設置し、調整を行なった。正常ウサギ40羽のABRを測定し、その波形より聴力閾値を求め、以後はこれをコントロールとして、聴力の指標に用いた。また、加齢による影響の有無を検討する目的のため、経時的な測定も続けた。 放射線照射装置に動物を固定するため、ガンマナイフに対応したウサギ用脳定位装置を作成・調整した。また、目標となる内耳道の位置の同定が、人と同様にCTにて可能かどうかを検討した。 一方、組織学的検索のために、内耳・聴神経・蝸牛神経核が同一切片内に同定され、かつ周囲の組織の観察が可能な条件を検討・設定した。 ついで、ガンマナイフによる放射線照射負荷実験を開始した。まず、80〜100Gyの高線量の照射を行い、聴力の経過と組織学的変化の観察はほぼ予定通り終了した。この結果、高線量照射群では内耳道内の聴神経のみならず、脳幹の蝸牛神経核や内耳内にも組織学的な変性が及ぶことが判明した。 また、臨床で使用する中心線量は25〜30Gyであるため、ガンマナイフ治療の臨床像をモデル化した10,20,30,40Gyの実験線量を設定した。これらの群に対して照射後1〜3カ月まで観察を行なったが、この期間の範囲では、ABRで評価する限り聴力の悪化はなく、他の脳神経症状も認められず、照射の副作用を捉えることはできなかった。 このため、観察をより長期の照射後6カ月〜1年まで続けると共に、次年度の目標として中等度線量の照射負荷実験を計画し、両者を合わせての経時的な観察と、さらに照射線量と組織学的変化との関係についての検討を追加して行なうこととした。
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