研究概要 |
本研究の目的は、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に合併する鼻茸の発生機構の解明にある。その一因として、鼻副鼻腔粘膜の間質を構成する細胞外マトリックスの分解能の亢進が想定される。そこで鼻茸や鼻副鼻腔粘膜における各種細胞外マトリックスおよび細胞外マトリックス分解酵素であるMatrix metalloproteinase(MMP)の発現を免疫組織学的に検討した。また、慢性副鼻腔炎における内視鏡下鼻内副鼻腔手術による上顎洞粘膜の再生過程の検討、鼻副鼻腔粘膜分泌細胞の定量的検討、粘膜下腺の三次元培養の検討も行った。 ヒト鼻茸およびその発生母地における各種細胞外マトリックスの局在を検討しコラーゲンI型、III型の鼻茸組織中での増加やテネイシンの発現増強を認め、鼻茸形成過程における細胞外マトリックスの動的変化があることが示唆された。また、細胞外マトリックス分解酵素であるMMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9およびインヒビターであるTissue inhibitor of metalloproteinase-1(TIMP-1)、TIMP-2の発現を検討した。その結果、正常鼻副鼻腔粘膜ではいずれのMMPおよびTIMPとも発現を認めなかったのに対し、鼻茸周囲の粘膜にはMMP-1、MMP-2,MMP-9の発現を認め、TIMP-1およびTIMP-2も鼻茸では発現を認めた。以上の結果より、MMP-2やMMP-9による粘膜上皮や血管の基底膜の損傷ならびにMMP-1などによる間質のコラーゲンの断裂により、間質内圧に抗しきれなくなった基底膜と上皮細胞群の突出が鼻茸形成の初期段階であると考えられた。現在、細胞培養を用いて細胞外マトリックスおよびMMP,TIMPとの関連を継続して検討中である。
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