研究概要 |
各種耳疾患における「側頭骨の発育」という観点から内耳ターゲットCTを用いて検討した.外側半規管が半円状に明確に撮影されている内耳ターゲットCT画像スライスを計測用に選択し,この画像をスキャナーにてコンピュータに取り込み,コンピュータ画面上で解析ソフトウエア(NIHimage1.24およびPhotoshop)にて内耳各部位の長さを計測した.計測したCT上の箇所は以下の4ケ所である. (1)後半規管から後頭蓋窩錐体縁の最短距離(P‐P距離)(2)後半規管から外側半規管の最短距離(P‐L距離)(3)前庭の後端から後頭蓋窩錐体縁の最短距離(V‐P距離)(4)後半規管からS状静脈洞前端の最短距離(P‐S距離)対象疾患は現在までのところ,両側メニエール病13例,一側メニエール病38例,耳硬化症14例であるが,コントロール群として慢性中耳炎25例を含めた.今年度は主としてメニエール病について検討し,上記4ケ所の計測部位の中でも特に後半規管から後頭蓋窩錐体縁の最短距離(P‐P距離)と前庭の後端から後頭蓋窩錐体縁の最短距離(V‐P距離)が慢性中耳炎群に比較して有意に短いことが判明した.この傾向は特に両側メニエール病で顕著であり,メニエール病では内リンパ嚢や内リンパ管が位置する周辺の骨の発育障害があることがわかった.この要旨は第54回日本平衡神経科学会総会のプレシンポジウム「末梢性前庭障害の臨床と成因-特に両側障害例について-」の中で「側頭骨の形態からみた両側前庭障害」と題して講演した.現在はこの講演をもとに論文を作成中である.メニエール病の原因を遺伝性とか先天性であるという意見があるが,メニエール病で見られる後頭蓋窩側の骨の発育障害の原因として幼児期にウイルス等の感染が考えられ、後天性の疾患であると考察した.
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