研究概要 |
メニエール病,慢性中耳炎,耳硬化症の側頭骨CT画像診断には病的所見など質的な解析が主体であり,側頭骨の発育のような量的な解析の研究は少ない.そこで本研究では内耳ターゲットCT画像を用いて各種耳疾患の側頭骨の発育状況を検討し,臨床診断上での有用性について考察した.対象疾患は,両側メニエール病13例,一側メニエール病41例,耳硬化症12例,一側慢性中耳炎25例とした.方法は,外側半規管が半円状に明確に撮影されている内耳ターゲットCT画像を計測用に各症例左耳右耳1枚づつ選択し,この画像を一旦35mmスライドフィルムに撮影した.フィルムスキャナーにてコンピュータに取り込み,コンピュータ画面上でNIH image計測ソフトにて内耳各部位の長さおよび面積を計測した.計測部位は,1.後半規管から後頭蓋窩錐体縁の最短距離(P-P距離),2.後半規管から外側半規管の最短距離(P-L距離),3.前庭の後端から後頭蓋窩錐体縁の最短距離(V-P距離),4.後半規管からS状静脈洞前端の最短距離(P-S距離),5.乳突蜂巣面積,以上の5項目とし,統計的な検討を加えた.その結果,後頭蓋窩側の側頭保熱の発育(P-P距離,V-P距離)が最も悪いのは,両側メニエール病先発耳であり,次いで両側メニエール病後発耳と一側メニエール病患側であった.逆に最も発育が良かったのは耳硬化症(両側)であり,その中間に一側メニエール病健側と一側慢性中耳炎(両側)が位置していた.一方,乳突蜂巣面積では,一側慢性中耳炎の患側が最も小さく,次いでメニエール病(両側性,一側性とも)であり,耳硬化症(両側)が最大であった.各疾患の側頭骨発育に有意差が認められることは,診断的に利用可能であると考える.またメニエール病や耳硬化症における発育の差の要因として幼児期のウイルス感染も一因ではないかと考察し,今後は主としてメニエール病内リンパ嚢等のウイルス検索が必要な課題であると思われる.
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