(1)内耳血管条を構成する3種類の細胞(辺縁細胞、中間細胞、基底細胞)の単離に成功し、辺縁細胞と基底細胞について、電気生理学的実験をおこなった。 (2)辺縁細胞の基底側膜には80pSのClチャネルと25pSの非選択的陽イオンチャネルが高密度で存在する(パッチクランプ単一チャネル電流記録法)。80pSのClチャネルのイオン選択性は、Cl>Br>I>NO_3>gluconateの順である。25pSの非選択的陽イオンチャネルは細胞内のATP、ADP、Ca^<2+>などによって調節を受けている。 (3)辺縁細胞のClコンダクタンスは細胞あたり約100nSと非常に大きく(パッチクランプーホウルセル法)、これは基底側膜の80pS Clチャネルに由来する。 (4)上記のClコンダクタンスは細胞体積と連動した変化を示す容積依存性コンダクタンスであるが、他の多くの細胞で報告されているものとは、イオン選択性や正常体積の細胞でコンダクタンスが大きいなどの点で、明らかに異なった性質をもつ。 (5)基底細胞には250pSのKチャネルが存在する(パッチクランプ単一チャネル電流記録法)。この生理的意義はまだ不明である。 (6)局所血管潅流法で維持した内リンパ直流電位は、Ba^<2+>、ベラパミル、キニ-ネの血管内投与で低下するが、テトラエチルアンモニウムや4-アミノピリジンでは変化しない。この結果は、内リンパ直流電位の生成に直接関与しているKチャネルの薬剤感受性を反映していると考えられる。
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