EABR測定系の開発およびEABR測定のための最適条件を確立した。特に蝸牛窓挿入電気刺激電極には、径0.1mmテフロンコーティングステンレススティール線2本を用い、その2本の電極間距離を5mmとること、またテフロンコーティングの削除は切断面だけに限ることの工夫により安定した高電位EABRが測定されることを確認した。 コントロールデータを作成した。500μAの電気刺激よりEABRを記録し正常モルモットでは閾値は20μAであった。電気刺激波形は単極よりも双極矩形波のほうがよりEABR出力良好であり、1〜4波の分離も明確であった。 ループ利尿剤を用い急性蝸牛血管条障害モルモットを作成し、蝸牛窓挿入電極電気刺激によりEABRを測定した。結果、コントロール群と比較してEABRに閾値、波形ともに変化は認められない事を確認した。すなわち、コルチ器感覚細胞正常なEP依存性難聴モルモットにおいてはEABR出力電位は影響を受けないと考えられた。 臨床的には蝸牛内に刺激電極を挿入してEABRを測定することは不可能であり、従って、鼓室岬角に電極を設置して上記方法によるABRの測定を試みたが安定した電位の獲得には至っていない。本検査法を臨床応用するには鼓室岬角電気刺激電極による測定が必須であり検査条件の開発が必要と考えている。
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