研究概要 |
ヒト滲出性中耳炎浸潤細胞のサイトカインmRNA発現を検討した結果,高率に浸潤細胞はmRNAを発現していることが認められた.また,IL-8濃度は小児滲出性中耳炎貯留液に高濃度に存在し,成人症例に比し有意に高値を示した.小児では,病態形成にケモカインの関与があることが推察された. ラットを用いた実験的中耳炎モデルにて,さらにケモカインおよびサイトカインの病態への関与につき検討を行った.中耳内における炎症の免疫学的過程をLPSを中耳内において潅流し,好中球走化因子であるIL-8ファミリー(GRO/CINC-1)およびTNF-αの中耳粘膜における産生を検討した.LPS刺激により,時間および量依存性にGRO/CINC-1およびTNF-αの産生が認められた.2時間以内に産生の亢進が認められ,中耳粘膜内のmRNA発現も認められた.小児粘液性貯留液を認める症例と類似の病態を検討するため,体温にて半固形ゲル状となる物質を中耳内へ投与し,この処置後のサイトカイン産生の変化を観察した.粘稠性物質の中耳貯留により,TNF-α産生に対する一次刺激効果が認められた.GRO/CINC-1およびTNF-αの産生はLPSの二次刺激により亢進することが認められた.これらの産生亢進はインドメタシンおよびコルチコステロイド局所投与により,サイトカイン産生の変化が,ラット実験的モデルから確認された.
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