アレルギー性鼻炎に対する免疫療法の免疫学的作用機序と臨床効果に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07671878
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 大橋 淑宏 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60160602)
• 研究分担者: 大野 義春 大阪市立大学, 医学部, 助手 (00271180)
• キーワード: 免疫療法 / アレルギー性鼻炎 / サイトカイン / IgE抗体 / IgG4抗体

研究概要

非アトピー健常人、未治療および免疫療法中のスギ花粉症患者、ダニを主抗原とする通年性アレルギー性鼻炎患者より末梢血リンパ球を採取培養し、抗原刺激下でのIgE産生とサイトカイン産生を比較検討した。スギ花粉の主要抗原であるCry j 1添加により、未治療のスギ花粉症患者では非アトピー健常人よりも有意に大きなIgE産生とIL-5,IL-6,IL-10などのTH2サイトカインの産生を認めた。また、TH1とTH2の両者より産生されるTNF-α産生も未治療のスギ花粉症患者では増大していた。免疫療法施行中のスギ花粉症患者では治療年数に相関して、IgE産生やすべてのタイプのサイトカイン産生は有意に抑制された。しかし、TH2サイトカインの抑制度、特にIL-5の産生抑制度が臨床的有効に関連していた。
一方、ダニを主抗原とする通年性アレルギー性鼻炎患者では主要抗原であるDer f 1添加により、IL-5産生とIgE産生が有意に亢進していたが、TH1サイトカインであるIFN-γの産生は健常人よりも低下していた。免疫療法中の患者では治療年数に相関して、IL-5およびIgEの産生は抑制され、IFN-γの産生もさらに抑制されていた。しかし、IL-5の産生抑制度が臨床的有効に関連していた。
以上の成績より、通年性や季節性の如何に拘わらず、免疫療法は抗原刺激時のTH1反応とTH2反応の両者を抑制し、Tリンパ球の抗原不応答状態、すなわちT cell anergyを誘導することが示唆された。しかし、TH1反応の抑制は副次的産物であり、TH2反応の抑制が免疫療法の主たる機序であると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Ohashi Y,et al: "Natural course of serum-specific immunoglubulin E and immunoglubulin G4 for a span of eight years in untreated patients with perennial allergic rhinitis." Laryngoscope. 107. 382-385 (1997)
• [文献書誌] Ohashi Y,et al: "Serum level of soluble interleukin-2 receptor in patients with seasonal allergic rhinitis." Scadinavian Journal of Immunology. 45. 315-321 (1997)
• [文献書誌] Ohashi Y,et al: "Significant correlation between symptom score and IgG4 antibody titer following long-term immunotherapy for perennial allergic rhinitis." Annals of Otology,Rhinology & Laryngology. 106. 483-489 (1997)
• [文献書誌] Ohashi Y,et al: "Immunotherapy affects the seasonal increase in specific IgE and interleukin-4 in the serum of patients with seasonal allergic rhinitis." Scadinavian Journal of Immunology. 46. 67-77 (1997)
• [文献書誌] Ohashi Y,et al: "Effect of immunotherapy on scasonal changes in scrum-specific IgE and IgG4 in patients with pollen allergic rhinitis." Laryngoscope. 107. 1270-1275 (1997)
• [文献書誌] Ohashi Y,et al: "Serum levels of specific IgE,soluble interleukin-2 receptor,and soluble intercellular adhesion molecule-1 in seasonal allergic rhinitis." Annals of Allergy,Asthama & Immunology. 79. 213-220 (1997)