3年間の研究より、免疫療法は遮断抗体の誘導、IgE産生の抑制、接着分子発現の抑制による好酸球性炎症の抑制、T cell anergyの誘導などの多彩な免疫学的機序で臨床効果発現に導くことが確認された。このように免疫療法の機序は単一ではなく多彩であるが、治療期間により異なる機序が臨床効果発現に関与していることも明らかとなった。また、免疫療法の有効性に関する臨床的研究より免疫療法はアレルギー性鼻炎を治癒に導くことが実際に可能な治療法であり、アレルギー性鼻炎患者のQOLを向上せしめうることが確認された。 特に、末梢血リンパ球の抗原反応性に及ぼす免疫療法の作用の検討より、免疫療法は抗原に対するTH1反応とTH2反応の両者を抑制するT cell anergyを誘導し、これがアレルギー性鼻炎の治癒に関与していることが認められた。しかし、TH1反応の抑制は副次的産物である可能性が高く、TH2反応、特に抗原刺激時のIL-5産生能の消失が鼻症状の消失やアレルギー性鼻炎の治癒に大きく関連していることが示唆された。したがって、免疫療法によるアレルギー性鼻炎治癒の目標として、TH2 cell anergy、特にIL-5産生の消失を目指すことの基礎的根拠が得られた。この成績はTH2反応消失を以って、アレルギー性鼻炎の治癒を判定しうる可能性を示している。 また、IL-4産生抑制作用を有する薬物投与を免疫療法の導入期に併用し、その有効性を検討した。その結果、IL-4産生抑制薬の併用により一過性のIgE産生を抑制し、免疫療法の臨床効果をより早期に可能ならしめる可能性が示唆された。
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