中耳炎の起炎菌の分子生物学的検索 本研究では、通常の細菌培養では22.4%で、H.influenzae、S.pnuemoniae、M.catarrhalisのいずれかが検出されたにすぎなかったが、PCR法ではH.influenzaeが89%、M.catarrhalisが36%、S.pneumoniaeが47%と高率に検出された。さらに検出率と臨床像との関連では、遷延群では細菌DNAの陽性率が有意に高値を示し、PCR法による細菌検出が臨床像を予測する上で有用であることが判明した。この成績から中耳炎発症において従来の細菌培養の成績から考えられるよりも、インフルエンザ菌が大きく関与していると推測された。 反復性中耳炎の発症メカニズム 反復性中耳炎患児(otitis-prone)では、P6に対する免疫応答が不良なため菌株共通殺菌抗体が十分産生されず、インフルエンザ菌感染が成立し、中耳炎を反復すると考えられる。さらにこれらの反復性中耳炎患児では同時に肺炎球菌に対する特異的IgG2抗体の産生も不良であり、中耳炎起炎菌に対する免疫応答が低下しているため、中耳感染を繰り返すと考えられる。 中耳炎に対するワクチン予防の可能性 CTBを併用したP6蛋白の経鼻免疫により、鼻咽腔洗浄液中の抗P6蛋白特異的IgA抗体は有意に上昇し、鼻咽腔粘膜に抗P6蛋白特異的IgA産生細胞が検出された。さらに経鼻免疫にて血清中の抗P6蛋白特異的IgG抗体および抗P6蛋白特異的IgA抗体も同様に誘導された。本研究の結果は、NTHiの低分子量抗原であるP6蛋白の経鼻免疫により鼻咽腔にて抗P6蛋白特異的IgA抗体が誘導され、P6蛋白がワクチンとして十分な免疫原性を有する抗原であり、経鼻免疫がインフルエンザ菌の鼻咽腔での感染を予防し、経耳管感染による中耳炎に対して予防的に働く可能性を強く示唆するものと考えられた。
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