研究概要 |
HEp-2細胞を用いた実験系においてシスプラチン(DDP)、5フルオロウラシル(5FU)の長期投与に関する検討を行った。この結果、単層培養細胞(mono)、多細胞スフェロイド(MTS)ともに薬剤の増量とともに殺細胞効果が上昇し、2つの薬剤ともに頭頸部癌(固形癌)に有効な事が示唆された。また、作用時間に関しては、DDPでは1時間から24時間と時間が長くなると効果が増すが、24時間から72時間の延長では、生存曲線に有意差が認められなっかた。すなわちこの実験系においてDDPでは24時間の持続投与は意味を持ちない事が示された。一方、5FUでは1時間から24時間、72時間と作用時間が長くなると効果の増加がみられた。HEp-2細胞の倍加時間は、約24時間なので、5FUは細胞倍加時間の少なくとも3倍以上に薬剤接触時間を設定する事が、より有効な投与方法であると思われた。臨床での少量長期投与が支持される。 併用療法の検討では、この2剤の併用を72時間の作用時間で検討すると、DDP0.1ug/ml,5FU 1ug/ml以上の濃度での併用では、2剤の薬剤濃度が高ければ高いほど相乗的に働く事が確認された。ちなみにこれらの濃度は十分に臨床で到達可能な濃度である。 一方、薬剤耐性細胞(DDP)によるMTS作成は、プレートに播く細胞の数を調節する事により可能になった。KB, HEp-2細胞ともに親株に較べてコロニー形成率の変化が認められ、MTSも硬い感じで、形態の変化も認めた。このDDP耐性細胞を用いた検討では、KB細胞において、monoでは約10倍の耐性であったのが、MTSでは耐性の増強が認められた。 Paclitaxelの効果を検討すると、DDP耐性MTSでも親株MTSと同等にPaclitaxelに反応する事が確認された。
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