研究概要 |
1960年代にDiGeorge症候群が報告され、さらに1976年木内らの報告と、1978年Shprintzenらの報告が臨床的に心疾患、口蓋裂、特異顔貌、胸腺および副甲状腺の無あるいは低形成、鼻声、軽度知能低下などの共通した症候を呈することがわかった。さらに近年細胞遺伝学から分子遺伝学への進歩に伴い3つの症候群に染色体22q11の欠失のあることが確認された。以上の症候群は、Cardiac defects, Abnormal faces, Thymic hypoplasia, Cleft palate, Hypocalsemiaの頭文字をとってCATCH症候群とされ、さらに1993年に染色体22を意味してCATCH22症候群と命名された新しいものである。 耳鼻咽喉科的には1977年木村により口蓋裂を伴わない鼻咽腔閉鎖不全症の32症例が報告されているのみでその後の報告はない。そこで今回耳科領域におけるCATCH22の所見を検討した。症例は当院の循環器小児科において心疾患を有するもののうちFISH法により遺伝子解析を行い、染色体22q11・2内欠失のある26症例について分析を行った。 症例は男性15名、女性11名、年齢は2歳から31歳である。最も多かったものは、耳介奇形20例(76.9%)中耳炎の既往および中耳炎の罹患20例(76.9%)であった。中耳炎に関しては耳管機能検査の結果約半数は機能は低下しておらず、乳突蜂巣の発育もX線写真で65%に良好であったことより難治性ではないことがわかった。しかしCTでは耳管の拡大が4例にみられ、さらに耳管機能検査不良例については第4鰓弓由来の口蓋帆挙筋の機能低下が示唆される。慢性副鼻腔炎が68.0%、開鼻声が61.5%、高位口蓋が30.8%、口蓋垂裂が29.4%であったが今回の症例には口蓋裂は1例もなかった。さらにCTでは蝸牛に異常はみられなかったが前庭に外側半規管の無形成・低形成、前庭の拡大が数例にみられ温度眼振検査で5例中4例に半規管機能低下をみとめた。以上の異常所見は第1.2.3.4.6鰓弓と神経堤細胞の異常と関連していると考えられた。
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