研究概要 |
1 実験的内リンパ水腫を作成したモルモットでは、クリック音の極性の変化によってCAPの潜時に差が有ることを確かめた。これは、内リンパ水腫の非侵襲的な客観的診断法として臨床に応用できる可能性がある。 2 臨床上は通常は極性を交互に変化させたクリック音を加算してECoGを測定しているが、水腫によるCAPの潜時の差があれば、加算によって見かけ上のCAPが小さくなり、これがいわゆるSP/AP ratioの増大として捕えられている事もあると思われる。水腫の診断における所謂SP/AP ratioの意義の評価を再検討する必要があると思われる。 3 内リンパ水腫モルモットのライスネル膜を構成する上皮細胞と中皮細胞の数の変化を調べた。正常モルモットでは下方回転ほど単位幅あたりの細胞数が少ないことがわかり,ライスネル膜の膨隆が鍋牛の下方回転ほど大きいことの理由と推測された。また、水腫によって、膜の単なる伸長ではなく細胞数の総数が増加することも新しくわかった。 4 低周波音(50kHz)のバイアス法による音刺激装置の作成およびキャリブレーションを行った。動物実験とは異なり、臨床検査では開放音場を使用するので、充分な音圧の低音を発生できるスピーカーを含む音刺激装置の作成に困難があった。研究目的、即ち客観的に内リンパ水腫の診断を行うには、充分の動物でのデータはあるが、臨床応用には至っていない。今後研究を継続することで、臨床的なデータを集めて、動物実験と対比する予定である。
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