研究概要 |
1)抗癌剤感受性試験(SDI法):頭頸部癌手術例に対するSDI法を用いた抗癌剤感受性試験をこれまでに53例(72検体)に行った。判定可能例は44例(51検体)であり、判定可能率は83%(71%)であった。感受性試験後に再発を来した9例に対する化学療法の臨床効果との相関を検討した。CDDPと5FUの両者に中感受性以上を示したものは2例であり、臨床効果は2例ともNCであった。CDDPと5FUのどちかか一方あるいは両者に低感受性を呈した7例で臨床効果はPR2例、NC5例であった。SDI法による再発腫瘍に対する化学療法の効果予測はfalse positive rateが100%であったが、true negative rateは71%であった。抗癌剤に対して抵抗性のある腫瘍の個別化がSDI法により可能なことが示された。この研究成果については第20回日本頭頸部腫瘍学会シンポジウムでの発表と論文発表を予定している。2)抗癌剤感受性試験(HRDA法):SDI法は検査に比較的多くの組織量を必要とするため生検材料では量が不十分となることがあった。そこで少ない組織量でも検査可能な三次元組織培養法(HDRA法)にて一部症例では感受性を検討した。またHDRA法は細胞間接触を生体と同様に保ち得ることからより臨床効果に近い予測ができると思われる。これまで頭頸部癌15例(18検体)に本法による検査を行った。CDDP20μg/mlでのinhibition index(I.I.)は28.5±23.4%(M±SD)であり、5FU300μg/mlでのI.I.は47.9±20.1%であった。このうち4例でCDDPと5FUによる化学療法前に検査を行った。CDDPのI.I.が68.5%、55.4%の2例では臨床効果がPRであるのに対し、3.4%、27.4%の2例ではNCであった。臨床効果に極めて近い結果が得られ、さらなる検討が必要とされた。3)免疫組織化学的検討:bcl-2,p53,Rbの各癌関連遺伝子の発現とTUNEL法によるアポトーシス陽性細胞率について感受性試験を行った例を対象に免疫組織染色法によるデータを評価中であり、抗癌剤感受性試験および臨床効果との相関性についても検討している。 研究成果は着実に上がっており、次年度研究成果も加え優れた知見を得ることができると思われる。
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