虚血網膜に対するNitric oxide(NO)の効果を電気生理学的に研究するため、家兎を用いて網膜虚血モデルを作成し、虚血後の網膜電図(ERG)b波の回復課程を経時的に記録した。投与方法は薬剤を硝子体内に直接投与した。また、NOドナーとしてSodium nitroprusside(SNP)を用い、対照液にはBSS plus(眼内潅流液)を使用した。 SNPの硝子体内投与に先立ち、NO単独のERGに対する効果を調べるため、10、1.0、0.1、0.01μMのSNPを硝子体中に投与し経時的にERGを記録した結果、0.01μMの濃度では、対照液注入時と同様に、注入後4時間でもERG振幅の低下はみられなかった。これより、虚血実験には0.01μMのSNPを用いた。 1時間虚血後ERGb波の回復率は、虚血解除後4時間ではSNP投与群で45.70±5.42%であったのに対し、対照群では35.61±4.95%でSNP投与群で有意に高かった。 SNP投与は、外因性NOの効果であるのに対し、内因性のNOの効果をみるために、NO合成酵素の基質であるL-arginineを硝子体内に投与した実験を行なっているが、現在までのところSNP投与時と同様の高い回復率を示している。 以上のことより、適量のNOが、虚血網膜の保護作用に関与している可能性が示唆されている。
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