研究概要 |
ラット,家兎の眼を対象として,光化学的血管内血栓誘発による網膜および脈絡膜血管閉塞モデルを作成することが可能なことを認識した.すなわちローズベンガルを静注後手術用顕微鏡の照明光で60分間にわたり眼底を照明したところ,網膜血管,および脈絡膜毛細血管板での血管閉塞が観察され,SLOフルオ蛍光眼底造影検査にて確認された.このようにして作成した網脈絡膜虚血眼でphotopic ERGを記録し,振幅の低下,頂点潜時の延長がみられた.しかしNMDA受容体拮抗剤であるデキストロメトルファン,カルシウムムブロッカーであるニフェジピン,フリーラジカルスカベンジャーであるスーパーオキサイドディスミュターゼ,キサンチン酸化酵素阻害剤であるアロプリノール等の虚血再潅流障害保護剤の前投薬による明らかな予防効果は未だ確認できない. 臨床的検討として網膜静脈分枝閉塞疾患者における,蛍光眼底写真撮影と静的自動視野検査の相関を検討した.視野感度は蛍光眼底検査における浮腫例では低下は軽度で,毛細血管閉塞例ではそれに比べ低下の程度が著しかった.特に毛細血管閉塞が完成してから期間のたった症例では絶対暗点を生じることがわかった.さらにレーザー網膜光凝固術を視野良好例におこなった場合には,凝固後に明らかな視野感度低下がみられることが明らかとなった.また網膜中心動脈分枝閉塞症における視野障害は大部分水平半盲の形をとることが明らかとなった.網膜細動脈瘤破裂による黄斑部出血に関して,網膜下出血が中心窩を覆う場合は長期視力予後は不良であるが,網膜前出血,硝子体出血では長期予後は悪くないことが明らかとなった.
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