優性遺伝性若年型視神経萎縮の8家系18症例に網膜全面視野刺激網膜電図および青錐体系網膜電図を記録して網膜に異常のないことを確認し、診断を確定した。視力、動的量的視野、臨床色覚検査のほかに、自動制御を用いたMaxwell視光学系により視感度測定と、高輝度LEDを用いた改良ハンフリー自動視野計により、青色、燈色示標に対する中心30度の静的量的視野測定を行った。対照として視感度測定と静的量的視野測定は各年代の正常者についても検査を行った。臨床検査として眼底写真撮影を行い、視神経乳頭の所見を記録した。その結果、視感度測定では、青錐体系感度の低下が著明であり、静的量的視野においては白色光で検査した際に良好であった感度が、青色光による視野測定で著明に感度低下を示した。しかし一方では、青色光の感度低下に加えて長波長側の感度の方がさらに低下している症例があり、優性遺伝性若年型視神経萎縮においては従来から言われているように青黄色覚異常を示す家系のほかに、赤緑色覚異常を示す家系が存在し、これらは混在することがなかったことより、遺伝的にことなるタイプが存在すると考えられた。また同一家系内でも視機能障害の程度に大きな差があることが確認された。 さらに臨床的には正常な家族員に臨床検査の他に同様の検査を行い前年度に測定した正常者の各年代の閾値と比較してsubclinicalな機能異常があるか調べた。その結果、眼底所見や視力により正常者と考えられた同胞の中に青錐体系機能が低下している症例があり、その特徴は発症者の青錐体系機能異常の特徴を備えており、彼らは軽微な発症者であると考えられた。これにより優性遺伝性若年型視神経萎縮において過去に浸透率や発現率が低いとされた家系においても、確実な表現型の確率が調査できる可能性が示唆された。
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