難治性網膜剥離の治療および眼内異物の除去に使用する事を目的として開発されたシリコン・フルオロシリコンコーポリマーオイル(SiFO)は、すでに用いられているシリコンオイルと異なり、硝子体液より重く、粘度は低い。すでに、SiFOはアメリカおよびヨーロッパにおいて硝子体手術に用いられ、下方網膜の難治性網膜剥離に対し効果があるという報告がされている。このオイルの家兎眼を用いた研究で、硝子体腔注入後2ヶ月目ころより組織変化が現れることがわかっているが電気生理学的にどういう変化が出てくるのかは報告がない。眼内に注入したオイルおよびガスの電気生理学的な評価を行うためには下方網膜と上方網膜での違いを調べる必要がある。そのための装置をセットしているところである。人眼の網膜色素上皮には色素が含有されているため実験動物として用いる家兎も白色ではなく有色家兎眼を用いて行う必要がある。しかし、日本においては有色家兎は高価で手に入れることが難しく、手に入れることができても、まとまった数は集まらない。そこで、科学研究費が交付されて後、本大学にて繁殖および飼育をしているところである。使用可能となった家兎を用い、予備研究としてこれまで報告されている組織変化の追試および今までの報告の検討をおこない、その論文を投稿中である。最近硝子体手術時によく用いられている液体パ-フルオロカーボンの網膜組織への毒性は徐々に明らかになっているが、硝子体腔から除去した後に網膜組織が回復するのかどうかはわかっていない。さらに臨床で用いられている、パ-フルオロカーボンガスや、フルオロシリコンオイルの網膜に対する影響も不明である。体重が2kg以上になったものからオイルを注入し研究を始めているところである。まもなく、まとまった数の有色家兎が使用できるようになる。
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