研究概要 |
1.ビデオ画像計測によるヒルシュベルグ法の臨床検査としての信頼性、有用性を明らかにするため、この方法論を用いて、87例の斜視症例について眼位ずれを測定した。繰り返し計測における測定値のrepeatabilityは、95%信頼区間として、水平変位については±0.18mm(±2.2゚)、上下変位については±0.28mm(±3.4゚)であった。この測定法と交代プリズム遮蔽試験との95%一致区間は、±7.8゚であった。ヒルシュベルグ換算値は12.3±1.2゚/mmであった。ビデオ画像計測で測定制度を増強したヒルシュベルグ法は、優れた測定再現性と、乳幼児を検査対象とする検査法としての簡便性を示した。しかし、定量的な解析には、換算値の個体差に基づく系統誤差に注意すべきである。 2.入射瞳の楕円率を基準とする眼位ずれのビデオ画像計測について、有効性を検証するため、8名の正常被検者についてシミュレーションした斜視角(<84prism diopters)を測定し、測定誤差について検討した。斜視角(θ)と測定値(φ)の間には高い相関(r=0.86,p<0.001)がみられた。回帰式はφ=0.71θ+4.39で、RMS誤差は5.6゚であった。測定値は、画像上で瞳孔を抽出するためのしきい値の影響を大きく受けた。検査法は、従来の検査法と異なり、スケールファクターを要しない利点があるものの、瞳孔画像の光学的歪に由来する系統誤差、不適切なしきい値による偶然誤差への配慮が必要である。
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